蟹の話

クレバーに抱きしめろ

統合失調症になった話①

はじめに

私が統合失調症であると明確に診断されたのは大学生の時分である。

統合失調症は諸説あるが、簡単に言えば脳がオーバーヒートによりバグってしまう現象だ。生来からの過敏な神経により、それを酷使し過ぎたゆえの故障。思えばその頃には昼夜逆転の生活を送っていたのだった。

個人差はあるが、私の症状は主に被害妄想と幻聴だ。一度街へくりだせば、「キモい」「あいつTwitterであんなこと書いてた」「あんな画像保存してるんだぜ」と言われた(と思い込んでいる)ものである。

これは自分と他者の線引きがはっきりしていれば起きにくいことであり、真面目に考えれば赤の他人が自分の情報の隅々まで知っているというのは、馬鹿馬鹿しいヨタ話だろう。しかし負のループに囚われた私には、その幻聴が真であり、家族が言う真っ当なアドバイスが偽としか思えなかった。これは陰謀論にハマるときとよく似ていると思う。

もし君の周りに、同じような体験を話す友達がいたら? ──恐れずに病院を勧めてほしい。この状態で認識の誤認を解くのは、医者でも難しいのだから。ここまでくると脳が完全に負のループに入っているため、薬で治すほか方法がない。そして、くれぐれもスピリチュアル系や食事療法など商売の餌食にならないように。彼らが我々と社会衛生への責任を持ってくれることはまるでない。

今となっては笑い話だが、当時は毎日が恐ろしいホラーの連続であり、脳内で作り出したストーカーをひたすらに怯えていたのだ。

豆腐は大豆に戻らない

私たちが統合失調症に関して持つ偏見……具体的には、何か訳の分からないことを喚いたり、犯罪を犯していたりするという負のイメージ。

私自身、統合失調症患者が犯罪を犯しやすい、犯罪率が高いと言われたら、ノーと言う。

そもそも精神疾患の罹患者で犯罪を犯したというサンプルが健常者に比べて圧倒的に少ない。健常者のサンプルのなかに、反社会性パーソナリティ障がいやNPDなどの症例を示す者はいたのかもしれない。しかし、昔に警察の犯罪データを確認したら、実際は健常者の方がずっと高かった。大昔の話なのでうろ覚えだが。

 犯罪を犯した者の属性だけを切り取り、その属性をもつグループごと排除をしようとする考えは危険である。ナチス支配下のT4作戦を彷彿とさせる。

それでもマスメディアやSNSは、我々をセンセーショナルに喧伝しようとする。

統合失調症は確かに未知の部分も多い。しかし、近年では全体的な軽症化が進んでいる。私ですらも、クローズ就労ができている位である。医学的な指導のもとに、用法容量を守り投薬治療を続けていれば、統合失調症は糖尿病と同じくして完全にコントロールができるのだ。

問題は、その完全な症状のコントロールに至るまでが困難であることだ。